2010年

9月

15日

自分を成長させる鍵

私はまだお芝居を学んでいた頃、

本番の前日や本番中はナーバスになったり(ふり?)

自分が何か特別なことをやっていて、

そのためには他のことは何一つ心配れない、

配れなくていい、と思っていたり

若さ故もあるのでしょうか、そんな時もあったわけです。

 

短大と劇団の研修科を終えて事務所に入り、

仕事としてお芝居をし始めたある時、

あるご縁で「異説・津軽あいや節」という一人芝居を企画・上演しました。

津軽の民謡と民舞、小さなものも入れて11役演じる1時間のお芝居。

 

初めはすべて一人でやっていて、1年後、その作者である先生が

改めて応援して下さり、衣裳や舞台装置や音響などを手配して下さったり

他県での上演も可能にしたのですが、

 

1年目は完全に自分プロデュースだったので

(もちろんたくさんの方に手を貸して頂いて上演できたのですが)

劇場の手配、照明&音響の手配、稽古場の確保、宣伝チラシの手配、

音源の確保&調整、全ての料金支払いと値段交渉、舞台設営など、

自分の責任で走り回って役者以外のことでひーこらひーこらしました。

(役者の作業でもひーこらひーこら♪)

 

この時、私は、その時の私が一番苦手だった、

「人の力を借りる」「人に頭を下げる」「お願いする」

ということを経験せざる得ない状況で、

とにかく、すったもんだの数ヶ月、無事に幕を開け、幕を閉じ、

「一人芝居だけど一人じゃできない」という

何より人のあたたかさ、ありがたさ、

そして、未熟であったからこそ頂いた成長をひしひしと感じたのでした。

何事にも変えられない大切な経験をさせて頂いたのです。

 

この時の私に最適な形で、最適な気づきを頂いたわけです。

 

この辺りから私の価値観が変わってきました。

何か特別であると思ってた「何者かの自分」が

「ただただ、未熟な自分」であることを知ったのです。

 

これは本当にありがたいことでした。

 

「ただただ、未熟な自分」は、

「やっとスタート地点にたどり着いた」

素晴らしき、そして愛すべき 『にんげん』 だったわけです。

 

「ヒト」である私が『にんげん』としての自分に出逢った、

最初の時だったのかもしれません。

 

なんの特別なことはない『にんげん・日野原希美』が

こうして少しずつ、自身と、

周りにいる素晴らしき存在の本質に目を向けるようになってきました。

 

そして、私がお芝居を始めた場所、長崎で

「さるく博」という博覧会があったとき、

長崎で3年間みっちり指導して下さった、お世話になった先生が

私を呼んで先生の作品を上演させて下さいました。

 

上演時間30分。始まって5分後から私の一人芝居。

台本もその場で頂き、

(他にもその時初めてふられたハムレット役(英語あり)とか笑)

いろいろと盛りだくさんで刺激的なお仕事となりました。

 

台本も覚えたいしできれば一人こもりたいくらいの気持ちでしたが、

その時、兄の家族が長崎におり、私はそこにお世話になっていたのです。

奥さんと別れて、兄と、小学校2年生、1年生、幼稚園の子どもたち。

 

朝起きて洗濯機を3回まわし、食事を用意。

帰宅後、食事&風呂の準備となぜか、朝方までの掃除。

家ではそれをひたすら繰り返す5日間。

 

夜中、お腹が悪くなってソソウしてしまった子どものフォローと愛情表現。

まるでお母さんになったかのような、母性愛を最大限に刺激された5日間。

 

その時の、長崎での私の仕事は、自分でも驚くほど素晴らしかった。

自分でも「いつセリフ覚えたっけ?」と思うほどの記憶力と集中力。

舞台でも、私はなにも言わなくても、仲間が自ら自己を高めようと努力を始める。

 

「自分がただひたすら与えられたことをこなすことで

こんなにも他に影響を与えるのか」と、正直自分でも驚いた。

 

呼んで下さった先生の顔をつぶすわけにはいかないプレッシャーもあったけど

舞台上の自分の集中力にはとにかく自分で驚いた。

 

日常を、そして目の前にいる人を大切にした ただそれだけで

私の仕事の質が変わった。

 

神様がいらっしゃるのだとしたら、これはプレゼントなのだと思った。

 

私自身が変わるための きっかけとなるプレゼント。

自分のことに集中するのと同じだけ、他にも集中したらいいよというMSG。

日常をしっかりこなすのがいいよというMSG。

 

そのMSGは私の、頭ではなく心に入り込んだ。

 

以前は、本番前は家のことはいっさいしない。

部屋が片付いていなくてもお構いなし。むしろそれが当たり前だと思っていた。

今は、本番前こそ部屋を片づけ掃除する。

 

自分を成長させる鍵は 誰かが持っているのでも、特別な場所にあるのでもなくて

日常に。いま、ここに ある。

 

最後まで読んで下さってありがとうございます。